東京高等裁判所 昭和33年(ネ)342号 判決
原判決正本は控訴人にあてゝ郵便による特別送達に付せられ熱海郵便局集配員藤田源作は昭和三十二年十一月十日控訴人方において、これを一人留守をしていた同人の二女当時九歳であつたきよみに交付した。しかしながら同女はその書類の重要さを十分解らなかつたので、これを控訴人に渡さなかつた。控訴人は、昭和三十二年十二月十四日執行吏が控訴人方に原判決の執行に来たので、家の中を探し同月十五日頃すでに送達されていた原判決の正本を発見した。右認定に反する当審証人樋川経雄の証言は上掲各証拠に照し合わせて信用ができないし、外に右認定を動かすことのできるなんの証拠もない。右認定の事実によれば、右送達は十分に事理を弁識するにたる知能のない年少者に交付したのであるから違法であり、これによつては控訴期間は進行しない。しかしながら、控訴人は右認定のように昭和三十二年十二月十五日頃右正本を事実上受領したのであり、しかもそのことについては特に異議を申出でてないから、少くともそのときには適法な送達がなされたと解するを相当とする。控訴人が本件控訴状を原審裁判所である静岡地方裁判所沼津支部へ提出したのは、同月二十六日であること記録上明らかであるから本件控訴は控訴期間内に提起された適法なものといわなければならない。
(村松 伊藤 土肥原)